少年は、時折さみしい顔を見せることがあった。
彼は、生まれてから自分の父母を知らない。
そして今親戚の家に預けられている。
だから、
いつも他人の家にいるような感じていた。
「みんなに迷惑がかからないように・・・」
少年の口癖だった。
知らないうちに身体が緊張しながらも
寂しさを隠すために周りには無理に笑顔を作って
陽気に振舞っていた。
そんな彼にとっての楽しみは
雲のない大空を眺めることだった。
その冬空には大きな凧が泳いでいた。
父と楽しそうに遊ぶ子どもの姿を見ては
少年も夢の中で、顔も知らない父と遊んでいた。
そして、もう一つの心が安らぐ瞬間が
冬から春に訪れを知らせる温かな風だった。
この風に包まれると
かすかな記憶にある母のぬくもりを感じることができた。
そのぬくもりが、
固くなった少年の心へじんわりと
染み込んでいった。
少年は、紙飛行機を作ることが好きだった。
丁寧に紙の両端を合わせて、
指先でしっかりと折り目をつけた。
左右のバランスと重心の位置を
いつも確かめた。
少年が紙飛行機を作るきっかけになったのが
ある日のテレビに映っている飛行船だった。
海外の様々な国を飛び回る飛行船だった。
大空に優雅に飛んでいく姿が
少年の目を輝かせた。
風に任せて、
彼の知らない世界を訪れることが
彼の夢になった。
しかし、少年の飛行機は
いつも気まぐれな風にあおられて
遠くに飛ぶことはなかった。
そこが自分の世界の限界だった。
少年は、きっと自分の幸せは
あの世界の先にあるんだろう、と思っていた。
ある時、一人の男が現れた。
あの世界の先に連れて行ってくれるという。
少年は、考えた。
「みんなに迷惑がかからないように・・・」
少年の口癖がでた。
自分が遠くその先に行くと、
ここに帰ってこれないような気がしたからだ。
親戚とはいえ、
急にいなくなったら心配するし、
少年は誰にも迷惑を掛けたくはなかった。
「時間がないんだ。」
男は言った。
「時間がない。」
少年はつぶやいた。
そのとき、自分に流れてくる
温かな風を受けた。
春の薫りがした。
「どこにいくの?」
少年はきいた。
「どこでも。風の通るところなら。」
男は答えた。
「そこに行ったら?」
少年は尋ねた。
「そこに行くまでの方がきっと楽しい。」
男は答えた。
少年は、男の手を掴んだ。
「風の方へ」
男は言った。
「君の行きたいところへ」
少年の心は何かから解き放たれた。
******
男は夢から覚める。
夢と同じ香りが風とともにやってきた。
風はどこでもいける。
風だけだろうか?
風は気まぐれに流れているのだろうか?
ぼくはどこに流れていくのだろうか?
風の中のぼく、、、ぼくの中の風、、、、
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2011年03月01日
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